鞆の浦の心地よい音色に包まれ、
心をそっと解きほぐす」
音を感じてもらう宿。
“遠音近音”という言葉には、遠くから聞こえる音と近くから聞こえる音を楽しむという意味があります。この建物を改修している際に見つけた掛け軸にあった、帆聲(はんせい)という方の歌からとって名づけたのですが、名前の由来としてだけでなく、その言葉がこの宿の概念ともなっています。
ここに居ると、波打ち際の音や船の音、風の音や鳥の声なんかが、すうっと聴こえてくるんです。お客様には普段の忙しい日常の中では意識することのない音を感じ、非日常を楽しんでいただきたいと思っています。なので、履く靴にしても、歩く音にしても、音には特に気をつけていますね。古くから鞆の浦にあったこの建物をただ利用するのではなく、確かなかたちで今に生かすため、利便性や快適性も常に追求しています。私どもの最終目標は、こちらにご滞在いただいたお客様が元気になってお帰りいただくこと。ただお泊まりいただいて、食事をしてというだけではなく、人間を再生するというのが旅館の使命だと思っています。「明日からまたがんばります」というお客様からのお言葉が何よりの励みですね。
日々、磨いているのは笑顔と五感。
鞆の浦という土地もそうですが、この宿は人にも恵まれていて、いいスタッフが多いんです。社員教育といいますが、むしろ教わることのほうが多いくらいで、私がしていることはスタッフがもともと持っているものを認めてあげたり、ときどき後ろで支えてあげることぐらい。もちろん、大変なときには出て行きますが、若い人達でしっかりやってくれています。パワーがあるんですよ。いろんな才能を持ったスタッフがいるので、それを生かして一緒に楽しんで働いています。スタッフも私も日々お客様によって成長させていただいているんです。初歩的なことなんですが、何より大切にしていることは笑顔。そして、五感を使って感じること。提供する施設や料理は目に見えますが、プラスアルファのおもてなしは人にしかできないことですから。