機械より手作業が速く、確実。
箱作りは簡単にできるものと思われるかもしれませんが、『曙工芸』ではすべての工程を人の手を介して行っています。もちろん道具としての機械は使いますが、スイッチを押せばオートマチックに完成するものではありません。まずは桐材をカットし、側(がわ)を組み、接着して面取りをし、研磨します。商品によっては絵柄や文字を入れたり、塗料を塗ったりとさまざまです。桐箱は小さなものほど技術が必要になりますし、機械では測れないわずかなズレや傷も見逃せないので、結局は機械より人の手で作業をした方が正確かつ速いんです。しかも桐材は、柔らかく加工がしやすい利点がある一方、湿度によっても大きさにわずかな差が生じるため、人の手や目でないと判断や対応が難しい。当社では、15名のスタッフで桐箱づくりの全工程を行っています。
ぴったり吸い付く、魔法のような蓋。
『曙工芸』では、桐材への名入れやプリント、レーザー彫刻などの加工も自社で行っています。2018年にUV印刷機を導入したことにより、カラープリントも可能になりました。一品から製作できるためオリジナル桐箱のオーダーにも対応しています。
また、特殊な技術により丸い桐箱の生産も可能になりました。どこにも角がなく、するすると滑らかでコロンと可愛い桐箱は、若い女性たちにも喜んでいただけています。
中身を入れて持ち上げても簡単には外れない、ぴったりと吸い付くような蓋づくりにもこだわりがあります。サイズや木目も合わせてあるので、たとえ正方形や丸型の桐箱でも向きが違うとしっくりきません。世界にたった一つの桐箱を、長年大切にしていただきたい。そんな想いがこめられています。
桐箱の、新たな世界を切り拓く。
父が桐箱製造業を創業し、受け継いで30年ほどになります。それまで私は服飾デザイナーをしており、伝統的な桐箱にもデザインやアイデアを施せないかとさまざまな新商品を考案してきました。ユニークなところで言うと、福山ブランドで同時登録・認定された「乳歯ケース」や、抜けた猫のひげを保管する「猫のひげケース」、パンをフワフワのまま保存する「ブレッドケース」などですね。
桐箱の特性は、軽い・腐食や熱に強い・虫がつきにくい・内部の温度や湿度を一定に保ちやすいことなど数多くあります。工芸品や贈答品を収めるためだけでなく、もっと身近に桐箱を置いていただけるように、これからも新しい商品を開発していきたいですね。