乳歯ケースを、手のひらサイズに。
「コンパクトなサイズの乳歯ケースを作ってほしい」と依頼されたのが、もう10年以上前。それまでの乳歯ケースは、サイズも大きく、同じ大きさの穴が整然と並んでいるだけで、あまり「可愛い」とは思えないものでした。そこで、依頼主の女性と一緒に作り始めたのが手のひらサイズの乳歯ケース。これまで贈答品を入れる箱など“桐箱らしい桐箱”しか作っていなかった当社にとっては「子どもの歯は何本あるの?」「歯のサイズはどのくらい?」と分からないことだらけでしたが、試作品を繰り返しながらやっと完成させました。
子育ても、時代とともに変わっていく。
子どもの頃、上の歯が抜けたら下に、下の歯が抜けたら上に投げていた……という人も多いはずです。家の二階から投げる、縁の下に投げる、屋根に向かって投げるというのが主流でしたね。それが時代とともにマンションの住まいが増えたり、乳歯を歯医者で抜いて持ち帰るようになったりと、「自然に抜けた歯を自宅の前で投げる」ということが難しくなってきたんです。そんな若いパパママのために作ったのがこの乳歯ケース。保管しやすいようにサイズを小さくし、角のない柔らかい形にし、キラキラと光るイラストとスワロフスキーを1粒飾って……と、手に取ってもらいやすいように工夫を凝らしました。
「歯」の考え方もイロイロ。
抜けた歯を投げて育ってきた層には、「歯を取っておいてどうするの?」と考える人も少なくないかもしれません。しかし現代は再生医療の分野が進歩し、取っておいた歯を病気の治療や研究に役立たせることができるようになってきたんです。またヨーロッパには初めて抜けた乳歯を取っておく習慣があり、それが日本にも広まり始めて、乳歯ケースという新しいアイテムが知られるようになりました。
一般的に乳歯は5歳頃から抜け始めるのですが、子ども本人に抜けた歯を保管させるご家庭も多いですね。子ども同士のクチコミで乳歯ケースが知られるようになったという驚きのエピソードもありますよ。どのデザインにするか、親子で一緒に選ぶのも楽しいですね。