備後絣から始まった福山が誇る繊維産業の歴史
福山の繊維産業の歴史は、福山藩の初代藩主・水野勝成が綿花の栽培を奨励した江戸時代にはじまります。その後、美しさと実用性の高さを兼ね備えた備後絣が福山の主要産業として発展。生活様式の変化や流行の移り変わりにより絣の生産は減少していきますが、高い技術は今も脈々と受け継がれています。絣で培った技術を応用し、デニムやカジュアルウエア、ワークウエアの製造が現在も盛んですが、国産高級デニム生地の多くがここ福山で製造されています。紡績、製織、パターン、裁断、縫製、染色、加工といった1枚の服を仕立てるために必要なすべての工程をこなせる専門工場が集積した地域は全国的にも珍しく、福山が “繊維のまち” と呼ばれる大きな理由のひとつです。
繊維産地継承プロジェクト実行委員会
委員長
藤本 貴也さん
デニムスクールの開催を通して、次世代の担い手を育成
世界の有名ブランドに生地を供給するデニムの一大産地であり、繊維関連企業が集積する全国有数のエリアであるにもかかわらず、「次世代の担い手が少ない」という悩みを抱え続けてきました。そこで、縫製工場やOEM 企業など8 社が協力して「繊維産地継承プロジェクト実行委員会」を設立し、「HITOTOITO」プロジェクトをスタート。工業用ミシンを使い、短期間でデニムパンツ(ジーンズ)の縫製技術を習得する「デニムスクール」を定期開催しています。備後絣の歴史やデニムの専門知識などを学ぶ座学のほか、織布工場や縫製工場、歴史資料館などの見学も実施。単に技術を習得するだけでなく、産地の広報活動としての一端も担っていると自負しています。
国内外から参加者を受け入れ、関係人口の創出に貢献
日本のデニムが持つ普遍的な価値や魅力は世界的にも注目を集め、2018年の初開催からのべ140人以上がデニムスクールを受講。市外や県外だけでなく、フランスやニュージーランドなど海外からも参加者を受け入れてきました。
卒業生のうち10名以上が地域の縫製工場に就職したほか、デザイナーやサンプル専門の縫製職人として独立したメンバーも。次世代の担い手確保につながっているだけでなく、地域の関係人口増加にも一役買っています。
県内外の学生を対象に1日デニムスクールを開催したり、一般参加者を募って産地ツアーを開催するなど、さまざまなカタチで活動を展開中。今後は、海外からのデニム留学や視察を受け入れるなど、新たな取り組みも視野に入れながら、繊維のまち・福山の魅力をより多くの人に知っていただき、地域の繊維産業を盛り上げていきたいです。