「農業」を通じた多文化共生を実践
福山市は「多文化共生のまちづくりの推進」や「市民との協働による国際交流の推進」など、市民が世界の人々とともに生きるまちをめざしています。これを実現するには、外国人市民が孤立することなく、安心して暮らすことができる地域づくりを進める必要があります。例えば若井農園では、外国人の孤立を防ぐ取組として、家族滞在の在留資格で福山市に暮らす外国人のお母さんたちをアルバイトとして採用しています。夫は勤め先で、子ども達は学校で日本社会と繋がりを持つ機会がある一方で、お母さんたちは家から出る機会が少なく、日本語を学ぶ機会も少ないため孤立しがちです。若井農園の畑で働くことで、畑に出入りする近隣農家さんとも必然的に出会うことができ、日本社会との繋がりを生みだすことができています。
若井農園(ワカイファーミー)
代表
若井 克司さん
来たる外国人との共生社会をどうやって作るのか? のヒントがここに
福山はものづくりが盛んで、世界規模の鉄鋼・造船企業を抱え、繊維産業においても有名企業が多数あります。留学生や特定の産業分野で働く外国人市民も多く、福山市に暮らす外国人は右肩上がりに増加。海外へ行かなくても、日本にいながら隣にいる外国人とどうやって共生する社会をつくっていくのかということは、これから大切なキーワードとなることでしょう。若井農園では農業を通じて日本に暮らす外国人と地域の日本人が気軽に交流できるようなコミュニティーづくりをめざしています。また、市内の小中学校・市内外の大学生等と連携した取組も進めており、インドネシア共和国総領事館やインドネシア共和国大使館から教育文化担当官をはじめとした方たちが畑を訪問するなど、日本人とインドネシア人が協働で取り組む活動はインドネシア政府からも注目を集めています。
目標は、農業を通じた日本とインドネシアの橋渡し
若井農園の長期的な目標は、農業を通じて日本とインドネシアの橋渡しをし、両地域の農業が共に発展することです。農園での活動は、ファーミが母国インドネシアの農業を盛り上げるために日本で学びたいことの実践の場でもあります。外国人と協働で取り組み発展する若井農園の活動を広報していき、外国人を受け入れている企業のモデル事例となることを望んでいます。また、 働きにくる実習生の多くは高校卒業の資格しかありません。日本で貯めたお金を大学進学等に充てられるよう、実習生の長いキャリア形成を考える取り組みも行っていきたいと考えています。すでにインドネシア国立マタラム大学と連携し、実習生が帰国後自国の農業の発展に寄与できる「場」をどのように準備できるかを検討しています。今後はインドネシア大使館や他大学とも連携を重ねながら、実習生の帰国後の進路やキャリア形成の活動にも尽力していきたいです。